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こうして、村の外部との交流が開始された。
翌日、あらためて、猛と青年団の一隊が海辺へ行った。
塩田の基礎を作り、国中たちに当面の食料、釣り道具、衣類、炭、石けんなどを提供した。
さらに、村の井戸を整備し、復活させた。
こっちには技術者がそろってるから、住環境を整えるのは、たやすい。
国中たちは、とまどう。
「なんで、ここまでしてくれるんだ。そりゃ、こっちは嬉しいが」
「蘭がさ。不潔なのは嫌いだって言うんだ」
原始人みたいな見てくれを指摘され、国中たちは乙女のように恥じらったという話だ。
交流は月に二度。毎月一日と十五日に決められた。魚は天日干し。イカは塩辛。貝類はバケツで生かしたまま。
交流日近くに獲れた魚は、生きたまま渡されることもあった。そんな日は新鮮な刺身に舌つづみをうち、蘭は大喜びした。
「おいしいっ。このアジの刺身。甘鯛はムリでも、けっこう、いろいろ釣れるんですね」
昔は庶民の食べ物だったアジも、今では、蘭と、その周辺の人しか食べられない。
国中たちの人数が少ないから、村人全員に行き渡るほどは交換できない。
「甘鯛、食いたいか?」と、猛。
「そこまでワガママ言いませんよ。サザエのツボ焼きだっておいしいし。シッポは猛さんにあげますね。タンパク質、大好きでしょ?」
猛はサザエのシッポを口に入れ、考える。こぶしを口にあてる、いつものポーズで、水魚に耳打ちする。
水魚は、こまっている。
「そうは言ってもですね……」
「たのむよ。そうすりゃ、村のやつらにも、わけてやれるし」
「しかたない。これっきりですよ」
猛が水魚に頼んだのは、燃料だ。
そのために、猛は前もって漁船の修理や網の確保をしていた。
その日、蘭は理由を知らされないまま、海につれてこられた。
地引網漁だ。
もと漁師たちが漁船で沖へ出ていく。網を投げ入れ、帰ってくると、浜で待っていたみんなが、一丸となって、それを引く。
国中たちも。不二村の青年団も。力をあわせて。
ワッショイ、ワッショイと声がそろう。
「僕たちも手伝いましょうよ」
蘭は、護衛の安藤と池野をさそった。
「ええっ、でも、蘭さんーー」
「僕だって男です。大漁旗、ふってみたいじゃないですか」
蘭も網に、とびついた。
非力な文筆家で、生まれてこのかた、資料の本より重いものを持ったことのない蘭には、かなり、きつかった。
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