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次の交換日、蘭はムリを言って、また、ついていった。
いつもなら、猛たちの車が来ると、国中たちは、とびだしてきて出迎える。以前の公民館が、国中たちの住処だ。
なのに、その日は誰も出てこない。
「どうしたのかな。今日は静かですね。この前と違いすぎる」
蘭はワンボックスカーのドアをあけようとした。猛が、とどめる。
「待て。ようすが、おかしい。安藤、池野。おまえたちは、ここで待機。蘭の護衛だ。もしものときには、おれのことはいいから、すぐ逃げろよ」
「えっ、ちょっと、猛さんーー」
蘭が抗議したときには、猛はもう車外に出ていた。日本刀片手に歩いていく。
ようやく、公民館から人が出てきた。
だが、国中たちではない。蘭の知らない男たちだ。
腰に思い思い、刃物をさげている。なかには、大きな斧やボーガンを持つ者も。
総勢三十名あまり。こっちのメンバーより多い。
三列横隊で、こっちを迎えるようすは、統制のとれたコミューンだということを示していた。
猛が第一声をはなつ。
「あんたたちは?」
「初めまして。おれは、こいつらを束ねてるヘッドの渋沢だ。そっちのヘッドと話したい」
「おれが隊長だ」と、猛は答える。
まあ、ウソじゃない。蘭は戦闘員じゃないから。
「では、取引しよう。あんたたちが、以前、ここに住んでたやつらと交わしてた取引を、今度は、おれたちとやらないか?
おれたちは魚や塩を提供し、あんたたちが米や野菜で買う。レートは以前どおりでいい」
そう言って、渋沢は国中が作ったレート表をとりだした。
それは公民館に貼られていた古いポスターだ。裏にインクのかすれたマジックで、表が書かれている。国中が書いたレート表……。
しばし無言で、猛は、それをながめた。
猛の無言を、渋沢は思案中ととらえたようだ。
「おれたちは、あんたたちがしてることをウワサに聞いて、やってきた。争う気はない。以前のやつらより、おれたちのほうが人数も多い。あんたたちにとっても効率的だろ?
なんなら、信用を得るまで人質をだしてもいい。人質は、おれの息子だ」
渋沢の合図で、一人の少年が前に出てきた。まだ十二、三だ。彼らが、せいいっぱい、誠意を見せようとしてることは伝わった。
でも、さっきから蘭は、腹の底に重い鉛を飲んだような気分だ。ずっと、気になってることがある。
すると、猛が口をひらいた。
「国中のおっさんたちは?」
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