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トラックの荷台から青年団がとびおりる。猛の援護に向かう。
はたして、猛は、どうなった?
「いやだ……猛さん。猛さんがいないと、おれ、生きてられないよ。おれの家族、猛さんだけなんだよッ?」
押さえる安藤たちの手を、ようやく、ふりきった。蘭が現場にかけつけたときには、もう戦闘は終わっていた。
たくさんの死体のなかに、猛は血まみれで立っていた。敵の血だけじゃない。猛自身も、かなりの手傷を負っている。
「猛さんーー」
蘭は、しがみついた。
猛が刀をとりおとした。
「おれは……仲間が傷つけられることは、絶対……ゆるさない」
声をあげて泣く猛を、初めて見た。
ふだん泣かないから、その慟哭(どうこく)は、いっそう胸に刺さる。
「猛さん。あなたのせいじゃない」
「違う。おれのせいだ。ウワサになれば、こんな連中が現れることも想定してなきゃいけなかった。
いや……考えなかったわけじゃない。でも、武器をあずけるには、まだ早いと……。
だから、おれのせいなんだ。おれが信用して、武器を渡してやってたら……」
こんなとき、薫なら、なんて言ったろう?
『兄ちゃんは、できるかぎりのことをやったよ』か?
それとも、『猛のおかげで、あの人たちは笑ってたよ。誰も猛を恨んでなんかない』か?
あんがい、乱暴に背中をたたき、『めそめそするなよ、猛。男だろ』とでも?
蘭には、かける言葉が見つからなかった。
ただ、だまって、猛の背中を抱きしめた。
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