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しかし、文面から漂う雰囲気がそうではないとも言っている気がする。
怪談好きとは言っても、専門家ではない私にはどうすることも出来ない。
「あまり気にし過ぎないように」と当り障りのない返信しか出来なかった。
その頃から私も仕事が忙しくなり、ネットラジオも休みがちになり、配信用のメールもなかなか開けない日が続いた。
受信ボックスの中に鷲尾さんからの数通のメールが届いているのに気がついたのは、半年以上も経った頃だった。
どのメールも何故か文面は大量の意味を成さない文字に埋め尽くされ、単語を探しだすことさえ困難な有様。
何度も文面を読みなおし、拾い上げた単語を繋ぎあわせて文章を再構成したものがこれだ。
『天気が荒れると、あの池の事を思い出す』
『あの場所へ行かなくてはいけないと、強く感じる』
『自分自身を落ち着かせるためにも、もう1度、あの池へ行った方がいいのではないか』
『呼ばれている』
『行かなくてはいけない』
『前世で水神への生け贄となった自分は、現世でもその宿命から逃げられない』
そして最後のメールには、ただ一言。
『行ってきます』
と、それだけが書かれていた。
慌てて彼女宛に何度もメールを送ったが、エラーメッセージが戻ってくるだけで、こちらから鷲尾さんにコンタクトをとる方法は絶たれてしまった。
もっと早く鷲尾さんからのメールに気がついていれば、彼女を止めることが出来たのかもしれないと思うとやりきれない。
彼女が私に送ってきたメールの内容が、全て創作であったのなら……その方がどれだけマシか。
はっきりした事が分からないまま、最悪な事を考える自分が嫌になる。
今でも2~3ヶ月に1度、思い出したようにメールが届く。
見覚えのないアドレスから、文字化けした意味をなさない記号で埋め尽くされたメール。
差出人も分からず、返信してもエラーになる。
果たしてこれは、彼女からの通信なのだろうか。
沖縄在住の方で、それらしい人物をご存知の方はいらっしゃるだろうか?
もしも心当たりがあるようなら、是非、私に教えてほしい。
了
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