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タツミはこの格納庫へ、同じく考古学を専攻している同級生のミサキと共に資料を整理しに行くことになった。
「お前たち、2人きりでこもるのはいいけどな。何をするべきか、わかってるな? 貴重資料の返却と整理、だぞ。くれぐれも、無用の長居はするんじゃないぞ」
少し前に恋仲となったばかりの2人に向かって、少なからぬ含みを持たせながら教授は言った。
先日のショウジの言葉を思い出してのことだったのかもしれない。
タツミはミサキをちらりと見ると、にやりと微笑んだ。
ミサキは口を「へ」の字に曲げた。
「変なことしたら、顔が原形留めなくなるくらい殴るからね」
「怖ぇな」
格納庫に着くと、ミサキは険しい目つきでタツミに凄んでみせた。
ミサキは背が低く華奢で愛らしい顔立ちだが、物怖じしたり怯むということを知らない気の強い少女で、正義感が強く男勝りである。
対するタツミは暢気で楽天的で、細かいことは気にしない大ざっぱな性格である。
それゆえ貴重資料もぞんざいに扱いがちなので、教授およびミサキから叱責されることもあるが、旧文明に対して人一倍強い関心を持っており、調査のための地道な作業も厭わない一面があった。
とはいえ、何事においてもリードをとっているのは常にミサキのほうで、どちらが男子なのかわからないね、と周囲から言われることもあった。
そのたびに渋い顔をするミサキの横で、タツミはへらへらと笑っていた。
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