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 直樹の顔をひと目見るなり、朝比奈は爆笑した。マンションの廊下に甲高い悲鳴にも似た笑い声が響き渡り、早く中へ入るよう、直樹は手招きで合図した。  朝比奈が入ったのを確認し、扉を閉める。 「おお、いいねえ。ブサイクにより磨きがかかってるぞ」  大きなガーゼを右頬に貼り付けた直樹は、恨めし顔で朝比奈を睨んだ。「それが怪我人に向かって言うことですか。心配してくれたっていいじゃないですか」  朝比奈にもショックを与えてやろうと、理由も説明せず呼び出したのが間違いだった。普通の人ならば、第一声で「うわ! どうしたの?」と訊いてくれるところだ。 「何で俺がお前の心配しなくちゃならないんだよ、時間の無駄だ」  直樹が案内する前に堂々とソファに尻を置く。まるで自分の家だ。 「僕殴られたんですよ」 「誰に? ああ、ノアにか。どうせ我慢できなくなって迫ったんだろう。だと思ったよお前スケベそうな顔してるもん」  直樹が読んでいた神ストを手に取り、ぱらぱらとめくりながら身勝手な憶測を立てる。足を引きずり、直樹は時間をかけてキッチンに移動した。「違います」
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