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「俺もすぐ帰るから」
けいちゃんは更に奥に進む。沖本さんはけいちゃんにすぐに気づいた。ふたりが立ち止まって挨拶し合ってる姿が目に入る。
あたしとけいちゃんが、同じ高校生同士だったら。
並んで手を繋いで歩いてるとこを、同じ学校の子に見られても、お互いちょっと恥ずかしくて気まずくて、視線逸らしてやり過ごしたり、逆にからかったりするだけで、終わる話。
なのに、今あたしはこそこそ隠れて、けいちゃんと沖本さんを木の影から見てる。
けいちゃんはあたしに背中を向けてるから、表情はわからないけど、沖本さんはこの偶然に驚きと喜びを隠せないカオ、してる。あの子やっぱり…。嫉妬なのかな、もやもやが更に強くなった。
今けいちゃんが、沖本さんのコーギーをしゃがみこんで撫でた。ご機嫌よく、けいちゃんに撫でられて、尻尾をフリフリしてる。けいちゃん、犬アレルギーだったら良かったのに。
あたしは、こそこそふたりの様子を覗き見してから、こっそりと踵を返す。とぼとぼとけいちゃんちに戻った。
でも、まだけいちゃんは帰ってなくて、あたしはアパートの外通路の手摺に?まって、けいちゃんの帰りを待った。
暇つぶしにアプリのゲームやってみるけど、全然ダメ。気持ちがノッてないんだろうな。
10分くらいして、けいちゃんが戻ってきた。無言のまま。けいちゃんの後について、けいちゃんの家に入った。
「千帆」
靴を脱いで上がろうとした瞬間、あたしの視界はけいちゃんに閉ざされた。
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