ふたりのルール

10/16
前へ
/16ページ
次へ
「俺も、戸惑ってばっかりだよ、春日」 「先生、大人なのに?」 くくっと、けいちゃんが肩を揺らして笑う。 「大人って…。この間まで学生だぜ、俺。買いかぶり過ぎだよ、春日。見たくなかったこと見ちゃって、もやもや~っとしたり、自分の思い通りに行動出来なくてイライラしたり…毎日、そんなことの繰り返し」 見たくなかったことって…さっきの酒井くんに腕掴まれての挙手とか? って思うのは、あたしの自惚れだろうか。 でも。 あたしの目にはけいちゃんは、先生としてちゃんとやってるように見えたし、あたしのことも公私分けてるように見えたから。 あたしと同じように『戸惑ってる』って言葉に、びっくりして安心する。 「春日」 あたしの名前を読んでから、けいちゃんは自分の前のキーボードを叩く。図書の在庫を調べる検索画面のワードに書かれてたのは、秘密のメッセージ。 ――日曜日、うちに来る?
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

374人が本棚に入れています
本棚に追加