ふたりのルール

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あたしは咄嗟に背後を見た。さっきの図書委員の子に見られたらどーすんの? ひとりで焦りまくる。 でも、その子はカウンターでテーブルに身を乗り出して、友達らしい子とおしゃべりしてる。まだ、新学期始まってすぐのせいか、図書館を訪れる生徒の数も少なくて、暇なんだろう。こっちに注目してる様子は全くない。 「春日、返事は?」 画面には、このワードで検索しますか?の下に、はい、いいえ、二択の返事。その画面を、けいちゃんは軽く指で弾いた。 「せ、せんせ…」 けいちゃん、大胆過ぎる。後ろの子の様子を伺いながら、あたしは震える手でマウスを握る。 けいちゃんち、…行ってもいいのかな。当たり前だけど、先生と生徒の関係になってからは、けいちゃんと学校の外で会ってない。 会いたかった。 こんなこそこそしたやりとりでなく、けいちゃんと話したいことがいっぱいある。 はい、のところにカーソルを動かして、クリックした。 もちろん、けいちゃんが入力した文字の本なんてないから。検索エラーの表示が出る。でも、けいちゃんは満足気にその画面を見て立ち上がる。 「またな、春日。これ手伝ってくれたお礼」 あたしの手元に、緑色の包のキャンディを3つ置いて、けいちゃんはカウンターを出た。あたしはその飴を制服のポケットにしまう。 帰り道、舐めてみたら、コーヒーの味だった。 そういえば、けいちゃんと最近キスしてないな…。
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