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目一杯おしゃれして、ちょっとだけメイクもして。
あたしは、けいちゃんちに自転車で向かう。日曜の朝8時。線路沿いには葉桜が揺れてた。久しぶりに心も空も晴れ晴れしてる。
「けいちゃんっ」
玄関で戸を開けてくれたけいちゃんに、あたしは抱きついた。
「おはよ、千帆」
久しぶりに名前で呼ばれただけで、ドキドキした。いかにも部屋着のTシャツとスゥエット。ゆるゆるだらだらモードのけいちゃん。
「随分早いよな。俺まだ朝飯食ってない」
ふああとアクビをひとつしながら、けいちゃんは言う。
「支度出来たら来ていい、って言ったから」
「千帆が休みの日に、早起きなんて思わなかったんだよね」
「だって、興奮しちゃって眠れなかったんだもん」
「うち来るのなんて初めてじゃないじゃん」
そう言いながら、けいちゃんは食器棚からいつものガラス容器を取り出した。
遠藤先生じゃない、いつものけいちゃんだ。
「千帆は? ご飯食べたの?」
「うん。けいちゃん、あたしに構わず食べていいよ」
「コーヒーは?」
「飲むっ」
「ミルクたっぷりでね」
けいちゃんはあたしをからかいながらお湯を沸かす。けいちゃんの好きなコロンビア。
「けいちゃん…」
可能な限り、隣に近づいてみた。触れたい、って思うの、あたしエッチかな。手繋ぎたい。髪撫でて欲しい。キス…して欲しい。
普段は担任の先生なんだけど、けいちゃんはあたしの彼氏なんだって。
あたしに思い出させて欲しい。感じさせて欲しい。
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