ふたりのルール

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「…けい、じゃなかった。え、遠藤先生っ」 突然現れたけいちゃんに、無意識に名前で呼ぼうとしちゃって、慌てて訂正する。 「丁度、良かった。手伝ってよ、春日」 けいちゃんはにっこり笑って、あたしに本の束を渡す。…何、この本。 「913の6、はい、これ持ってって」 「へ?」 ハクション。あたしが目を丸くしてると、けいちゃんはあたしから顔を背けて、くしゃみをする。苦しそうに鼻を啜りながら言う。 「な、何ですか、これ」 お、重い。突然あたしの両腕にのしかかった本10冊分の重みに耐えながら、あたしはけいちゃんに聞く。 「今月新しく入荷した本。棚番号表、そこにあるだろ? 背表紙の分類コードに合わせて棚に入れてきて。これ、全部」 「ええええええ」 つまりパシリ。いたいけな女子高生を顎で使わないで。思い切り不服そうにけいちゃんを睨む。 「なんだよ、お前図書委員やるんだろ?」 「だって、何でけいちゃんがこんなこと…図書の先生、いるよね」 「司書の資格持ってるから」 「変なの」 「校務分掌って、システムがあってだな…ま、いいや。仕事仕事。全部出来たらご褒美やるから」 けいちゃんの仕事なんじゃないのお? 何なの、この下請け孫請けシステム。反論しようと思ったけど、『ご褒美』の言葉につられて、甲斐甲斐しく働いてしまった。あたしって、単純。
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