ふたりのルール

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あたしに重労働させておいて、けいちゃんはカウンター内のデスクで事務作業してた。恐らく今あたしが棚に並べて来た本を、パソコンで検索掛けられるように入力してる。 「終わりましたけど」 あたしは不貞腐れた声で、けいちゃんに言う。 「ああ、ありがと」 モニター画面を見てたけいちゃんは、あたしに微笑んだ。教師みたいな、笑い方だった。 「…先生」 「ん?」 「先生は慣れました?」 何に、とはあたしは言わなかった。先生の仕事。あたしたちの不自然なこの状況。どっちにでも取れるように。他の人が聞いても、疑われないように。 「…春日は?」 あたしに逆質してきて、けいちゃんは自分の隣の椅子を引いた。こっちにおいで。声に出さない誘いに、あたしはカウンターの中に入って、けいちゃんの隣に座った。去年までの委員の子かな。カウンターの中にいた当番の生徒が、あたしをちょっと不審げに見る。 「あたしはいまいち、慣れないです。どうしていいかわかんないことの方が多い」 嘘を吐くのも上手じゃないし、すぐに顔に出ちゃう。けいちゃんを好きな気持も、不安な気持ちも。 沖本さんがけいちゃんに近づけば、ムッとなるし、酒井くんに一緒の委員やろう、って言われただけで、けいちゃんに誤解されないか気になっちゃう。 こんなんで、卒業までごまかせるのか、不安で仕方ない。バレたら、失うものが大きいのはけいちゃんの方なのに。
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