第3章 秘密の重み

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「今回は俺も大人げなかったけど」 「けいちゃん、嫉妬した?」 ずばりと聞くと、けいちゃんは焦ったのか、言葉に詰まってごほごほとむせる。「学校ってどうしてこう、何処もかしこも埃っぽいんだろうな」そんなざーとらしい言い訳しながら。 「…したんだ」 にんまりして勝ち誇ると、けいちゃんにおでこ小突かれた。 「いたっ」 「オトナをからかうな」 ちぇ、いいじゃん。いっつもあたしのこと、からかってばっかりいるくせに。大して痛くもなかったおでこをあたしは、指でさすっていたら、けいちゃんはふっと真顔になった。 「…結構、もどかしいモンだよね。目の前で起こってる事柄に、有効な対策取れないの」 「……」 けいちゃんはいっつも強気、っていうより、なんにも考えてなさそうで、感じてなさそうで。 脳天気な楽天家なけいちゃんの弱気な顔に、驚いてしまう。 「お前、傍からみて警戒心ゼロだから言っとく。酒井って、絶対お前に気があるぞ」 「まさかあ。酒井くんは友達だもん。彼氏いるって言った時だって、あっさりしてたし」 たとえば沖本さんが、けいちゃんに同じこと聞いてた時みたいなショックは受けてなかった…と思う。 けいちゃんの注意を、あたしが一笑に附すと、けいちゃんは不機嫌な顔になる。 「映画だ、ドライブだ、さんざん付き合っておいて、俺の気持ち全く気づいてなかったの誰」 けいちゃんはあたしの首を腕に抱え込んで、もう一方の手であたしの頭をぐりぐりする。 「…あたしです」 だって、あれは。けいちゃんみたいな年上のカッコイイ人が、あたしなんかを好きになるはずはないだろうっていう、思い込みが…。 ぶつぶつあたしが独り言めいた言い訳続けてると、今度は指先でパチンと額を弾かれる。 「ばかになっちゃうから、頭攻撃しないで」 それでなくても受験生なのに。 「本を読むにも、歴史を紐解くにも、――恋愛するにも、いちばん必要ないと思うけどね、先入観。千帆は頭で、こんなはずない、こんなことあっちゃいけない、って考えすぎだよ。自惚れないのはいいとこだと思うけど、警戒心ないのは、彼氏として心配」 「…酒井くんには近づくな、ってこと?」 「違うよ。そうかもしれない、って思って行動しろ、ってこと」 けいちゃんの注意は遠回し過ぎてよくわかんない。 「もっと具体的に…」 「安易にふたりきりになったりすんなよ、って言ってるの」
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