第3章 秘密の重み

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「ちぃの彼氏のけいちゃんが、遠藤先生…」 「世の中、何が起こるかわかんないよねえ」 「信じられない。遠藤先生って、もっと知的なイメージだった。授業もわかりやすいし。いい先生だと思ってたのに、あんたのあのネジが一本抜けてそうな彼氏と同一人物なのお?」 いくら語る人物が変われば、語られる人物像も変わるったって、あんまりだ。とか何とか、言って、七海は別の方向にショックを受けてる。 ネジが一本…って失礼な。けいちゃんは底抜けにポジティブなだけだよ。あ、底抜けの方がネジがないより失礼かもしれない。 七海はしばらくぼんやりと考えてた。あたしは暇を持て余して、自販機で七海の分と2本、コーラを買って戻る。 あたしの手からコーラを受け取って、ごくごく飲んでから、七海はぽつりと言った。 「大変だったね、ちぃ」 大変、だったかって言うと。置かれた立場の深刻さに対して、けいちゃんの態度が軽すぎるから、七海に同情してもらうほどではないけれど。 それでも、あたしの気持ちに寄り添ってくれるような言葉に表情に、じんと来た。 「あ、うん…秘密にしてて、ごめんね」 「ま、しょうがないんじゃない? あーでも、遠藤先生モテるから、こんなのバレたら一大事だね。あたしは先生として尊敬してるだけだからいいけど、本気でムキーってなって、ちぃに攻撃してくる奴らとかいそう」 真っ先に沖本さんの顔が浮かんでしまった。 「あはは、そうだね」 教壇降りたら、けいちゃんなんて残念イケメンだけどなあ。ティッシュ手放せないし、脳天気だし。 そんな部分も含めて、あたしはけいちゃんが好きだけど。 「何かあったら、今度はあたしにも言えよ~。助けるから」 七海の男前の台詞がくすぐったい、でも嬉しい。言う方も照れくさいみたいで、茶化すように頬を拳でぐりぐりされた。 「やめてよ~」 なんて言いながら、じゃれあう。 七海に言えたことで、あたしは少しだけ心が軽くなった。
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