第3章 秘密の重み

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「何?」 「すみません、こんなところまで。ちょっと質問いいですか?」 と言って、教科書の付箋のついたページを開く。再来週から始まる試験のメインになるであろう荘園制度について書かれたページだった。 教科書を一緒に覗きこむような格好になると、彼女は少しはにかんで、ちらっと視線を紙面ではなく俺に向ける。それには気づかない振りをして、彼女の質問に答えた。 歴史の勉強は好きらしい。知識もそれなりに持ってる。その入手先もわかりそうな偏ったものだけど。ま、ゲームとか漫画とかで、興味を持つのはいいことだよな。 教科書に書き込む沖本は、一見至極勉強熱心で真面目な生徒に見える。ただ、問題はこのあと、なんだよな。 先日の彼女はいるか?の質問に始まり、次は「写真を見たい」。断るとどんな人なのかをしつこく訊いてくる。 今日は何を言われることやら…。質問に納得して、教科書をぱたんと閉じた彼女に、つい身構えてしまう。 沖本はえくぼを作って、俺に微笑んできた。 「先生、そういえばあたし、昨日の放課後、図書室行ったんです」 言われて、ぴくんと眉が上がってしまった。
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