第3章 秘密の重み

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昨日の放課後、俺は千帆と図書室にいた。ふたりだけで。 些細な行き違いで衝突して、千帆は教室で俺と目も合わせなかった。無視されてるのがわかると、余計に彼女ばかり目で追ってしまう。教師と生徒の恋が禁じられてるのって、結局こういうことにも一因があるわけだ。 なるべく全ての生徒を平等に見ようと思っても、絶対に絶対に特別扱いしてしまうから。 「言い過ぎた、ごめん」それが言いたいだけなのに、現実は話しかけるきっかけすらない。電話よりやっぱり直接言いたかった。千帆の顔を見て。 職員室に戻ろうとして、脱兎みたいに図書室に駆け込む千帆を見て、慌てて追いかけた。誰も居ないのを確認してから、後ろから抱きしめると、千帆の心臓がセーラー服のリボンを揺らすくらい、ばくばく大きくせわしなく動いてた。 千帆に触れてると俺は安心するのに、千帆はドキドキして仕方ないらしい。 ほんの10分くらい、千帆と話して、最後に唇を掠めるだけのキスをして、俺は図書室を出た。 その時には入り口でも付近の廊下でも誰にも会わなかった――。 「そう。それが?」 まさか見られてないよな? 動揺を隠して、沖本の次の言葉を待つ。 「閉館中、って書いてあったから中に入らなかったんです。でも昨日は普通に図書室開ける日ですよね? 先生、何かご存じですか?」 大きな瞳で、沖本は俺を見つめる。こっちの後ろめたさを見透かそうとしてるみたいだ…と思ってしまうのは、実際こっちに疚しさがあるせいか。
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