第3章 秘密の重み

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「先生」 HRが終わったあとで、酒井くんとふたりで、けいちゃんを呼び止めた。けいちゃんは、日誌を持ったまま立ち止まる。 「お揃いで何?」 とちょっとだけ口元歪めて言うけいちゃんには、あたしと酒井くんの用件、わかってるんじゃないの? 答案採点したのも、さっき追試の日程告げたのも、けいちゃんなんだから。 「来週の図書委員の当番、誰かに代わって貰ってもいいですか? その、あの。あたしも酒井くんも…」 あたしが言いにくくて、口ごもってることをけいちゃんはズバリと先回りして言って来た。 「仲良く追試組だもんな、お前ら」 ちなみにあたしが37点、酒井くんが39点。酒井くんは『勝った!』とガッツポーズしてたけど、あたしは追試日本史だけだもん。 「…すみません」 「まあま、誰にだって苦手なものはあるって、春日。俺なんか、勉強全般苦手だもん」 何故か、酒井くんがあたしを励ましてくれた。ポン、と軽くあたしの肩を叩いてから、腕を組んで尤もらしく、自分の言葉に納得してる。けいちゃんの「何でお前が慰めてんの?」と言いたげな目が、面白い通り越して、ちょっとコワイ。 「あ、あ、だから。えっと。水曜日の図書当番、他のクラスの子に代わって貰っていいですか?」 もうとにかく用件だけ済ませちゃおう。あたしは必死に手短に話を切り上げようとする。 「ああ…誰かアテ、あるのか?」 「えっとお」 この間の委員会で顔合わせしたけど、直に連絡取れるような見知った子、いなかったんだよなあ。 寧ろ酒井くんの方が、友達多そうだから、ツテがありそう? いやでも、図書委員なんてやる友達は少なそうだ。アクティブかつアグレッシブな友達ばっかりぽいもん。 交代のアテを考えていたら、突然。 「私、代わってもいいですよ」 そう名乗ってきた女の子がいた。
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