第3章 秘密の重み

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真っ先にけいちゃんの近くに走り寄って行ったのは、あたしじゃなくて沖本さん。あたしのけいちゃん、じゃ今はないにしても、うちのクラスの担任なのに…。つまんない独占欲が抑えきれない。 ペンケースにシャーペンを終い、ノートを閉じながらも、沖本さんの甘ったれた声に集中してしまう。 「先生も図書の先生なんですね」 「ああ」 「この間も、偶然公園で会っちゃうし、先生とあたし、なんか偶然多くないですか?」 「え?」 偶然が続けば運命だとでも言いたいのか、沖本さんの言葉にけいちゃんは、明らかに言葉を詰まらせた。 だけど構わずに、彼女が続けた言葉に、あたしまで絶句。 あーもう、心が荒んでやさぐれていく。でも、彼女がこんな悶々とした思いを抱いてると知ってか知らずか、けいちゃんはまだ沖本さんと話してる。 「うち、あの公園の近くなんです。また、アン散歩させてたら、先生に偶然会えないかな?」 アンって、あのコーギーの名前かな。家、近いんだ…。けいちゃんちからも、歩いて10分掛からないくらいなのに。 「そうなんだ。じゃあまた、会えるかもね。いつも沖本が散歩させてるの?」 「週末だけです。学校ある時はママが」 「そっか、偉いね沖本」 けいちゃん、グッジョブ!。さりげに、彼女の行動パターン聞いてくれてありがとぉ。土日は、絶対あの辺り近寄らないようにしよ。 「先生、さようなら」 ふたりの脇をすり抜けるように、あたしはけいちゃんに声を掛ける。 「気をつけて帰れよ」 けいちゃんはきゅっと目を細める。優しいそのカオ、好き。そのまま、部屋を出ようとしたら、肩をぽんと軽く叩かれた。 「春日、一緒に帰ろうぜ」 けいちゃんの目の前で、あたしに声を掛けてきたのは酒井くんだった。 あたしが全身を硬直させると同時に、けいちゃんも目を丸くしてた。 でも、同じクラス同じ委員。そして席も近いから、授業の合間とかに酒井くんとはよく喋る。 クラスでいちばん仲のいい男の子、と言ってもいいくらい。 い、一緒に帰るくらいなら普通だよね。やましいことないし。けいちゃんも何も言わないで、ただ黙ってあたしを見てた。 「あ、う、うん。いいよ」 あたしは酒井くんと並んで図書室を出た。背中にけいちゃんの視線を感じながら。
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