第3章 秘密の重み

4/22
前へ
/22ページ
次へ
「すっかり遅くなっちまったな」 昇降口で靴を履き替え、駅までの一本道を酒井くんと歩く。なだらかなコンクリートの坂道に、あたしと酒井くんの影が、色濃く映された。 「うん、そうだね。でも当番の日はもっと遅いでしょ」 週に一度、交代で図書カウンターの仕事と、隔月の書庫の整理。あたしたちの仕事はそんな感じらしい。文化祭や体育祭の実行委員みたいに、大きな行事があるわけじゃないから、淡々とした日常の業務をこなせばいい。 つまらないかもしれないけれど、楽そうだった。沖本さんとも当番の日が違うから、そんなに顔をあわせることもないだろうし。 「したら、毎回一緒に帰れるな」 酒井くんに言われて歩みが止まった。そう、同じクラスだから彼とは当番の日が一緒だ。毎週水曜。放課後5時半まで。 「え、え、ええっと」 困惑をあたしは隠さなかったのだろう。酒井くんが、ちょっと気を使うように訊いてくる。 「あれ? 春日って彼氏とかいたっけ」
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

308人が本棚に入れています
本棚に追加