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「すっかり遅くなっちまったな」
昇降口で靴を履き替え、駅までの一本道を酒井くんと歩く。なだらかなコンクリートの坂道に、あたしと酒井くんの影が、色濃く映された。
「うん、そうだね。でも当番の日はもっと遅いでしょ」
週に一度、交代で図書カウンターの仕事と、隔月の書庫の整理。あたしたちの仕事はそんな感じらしい。文化祭や体育祭の実行委員みたいに、大きな行事があるわけじゃないから、淡々とした日常の業務をこなせばいい。
つまらないかもしれないけれど、楽そうだった。沖本さんとも当番の日が違うから、そんなに顔をあわせることもないだろうし。
「したら、毎回一緒に帰れるな」
酒井くんに言われて歩みが止まった。そう、同じクラスだから彼とは当番の日が一緒だ。毎週水曜。放課後5時半まで。
「え、え、ええっと」
困惑をあたしは隠さなかったのだろう。酒井くんが、ちょっと気を使うように訊いてくる。
「あれ? 春日って彼氏とかいたっけ」
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