第3章 秘密の重み

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いるよ。さっきまで目の前にいたじゃん。いつも、授業やってるじゃん。…と、言えたらどんなにいいだろう、と思いつつ、あたしは半分ホント、半分嘘の答えを酒井くんに返した。 「う、うん…いるよ。年上だから同じ学校じゃないけど」 「あ、そうなんだ。俺の知らないやつか。あ~、だから春日って遠藤ちゃんもスルーなのな」 酒井くんはあっさり納得する。なんの屈託もなくて、酒井くんてもしかしてあたしを…なんて、自惚れがかすめた自分が恥ずかしいくらい。 「じゃ、他の男とふたりきりとかまずい? 彼氏って、独占欲とか強い方?」 どうなんだろ。けいちゃんにヤキモチって妬かれたことないや。そもそもハタチも過ぎた社会人が、高校生の、それも自分の教え子に妬いたりしないよね? 「そんなことはないと思う」 「じゃ、いいよな」 提げてたスポーツバッグを肩に担ぎ上げて、酒井くんはまた白い歯を見せて笑う。 「うん」 いつも何が「いい」のかよくわかんないけど、あたしはまたその笑顔につられて笑ってしまった。 坂道を降りきったところにある踏切が、警報を鳴らしてる。まだ半分も降りきってないのに、赤色の矢印の向きを見て。 「あ、俺の方だ」 反射的に酒井くんは走りだす。え、今からで間に合うの? 「じゃーな、春日。また明日」 酒井くんは思ったままを口にして、思ったまま行動する。一緒に歩いたの結局5分くらいじゃん。 でもその奔放さが、嫌な感じではなくて、走りだして5メートルくらいしてから、振り返って両手で大きく手を振る酒井くんに、あたしも笑顔で手を振り返してた。
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