308人が本棚に入れています
本棚に追加
夜になって、けいちゃんから電話があった。
高校教師は見た目以上に大変らしく、けいちゃんの帰りもいつも遅い。今も、夜9時を回ってる。
いつも帰ってきてすぐにあたしに連絡をくれるから、けいちゃんがキッチンに立って、夜ご飯を作りながら…ってのが殆ど。時々聞こえる操作音は、肩と耳にスマホを挟んでるから、思わぬところを押しちゃって、出るものなんだと思う。
今もけいちゃんの声と水音が響いてた。
その水の音がしなくなってから、けいちゃんがポツリと言った。
「千帆さあ、酒井となんかあるの?」
普段の声より低いけいちゃんの声。探りをいれるような言い方も、らしくない。
「なんか…って?」
「今日も一緒に帰ってたし、そもそも委員会決める時だって、仲良く手繋いで立候補だろ?」
「手を繋いでたわけじゃ…」
あれは、逃げないように掴まれた、のが正しい。だから、けいちゃんの仲良く、って認識は間違ってる。
「あんまりさあ、見せつけるようなことすんなよ」
イラッとしたように、けいちゃんに言われて、あたしはカチンと来てしまった。
最初のコメントを投稿しよう!