第3章 秘密の重み

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「み、せつけてなんてないよっ。そんなこと言ったら、けいちゃんだって、沖本さんとイチャイチャしてるじゃん」 「イチャイチャ? 俺が? いつ」 「こないだの公園の時も、頭撫でてたし」 「犬のだろ」 「今日だって、予定聞いてたし」 「あれは、千帆と彼女が鉢合わせないようにだろ? 大体、学校での交友関係に口出ししないルールでしょ?」 「先にけいちゃんが、口出ししてきたんじゃない」 もんのすごいくだんない痴話げんか。でも、止まらない。 「夜になって電話でぐちぐち言うくらいだったら、あの時に言えばいいじゃん。やめろ、って。一緒になんて帰るな、って」 けいちゃんは酒井くんに、あたしは沖本さんに。 ずっとモヤモヤしてたもの抱えてたんだと思う。自分でも気づかないうちに。 だから、それが爆発したって感じ。こんな怒り方するくらいなら、もっと早くに言えばよかったのに。 バン!と何かを叩きつけるような音が機器越しに届いて、あたしはブルっと肩を震わせた。 「それが出来たら俺だって…」 いっつもほわほわしてるけいちゃんの、こんな苦しそうな声を初めて聞いた。 俺だって…何? でも、ぷちっと通話はそこで切れた。 けいちゃんとのつながりがシャットアウトされた証を聞きながら、鼻の奥にツンと涙がこみ上げた。とっくに、あたしは自分の言ったことを後悔してた。 初めてケンカなんてしちゃった…。 やっぱり無理なのかもしれない…。担任の先生との秘密の恋なんて。
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