第4章 修学旅行とバースデー

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福岡空港は、曇天に包まれてた。いつ、雨が降り出してもおかしくなさそうな、どんよりとした空。 週間予報、全部まとめて傘マークついてたもんな…。一昨日気象庁が梅雨入り発表してたしな…。 何でこんな時期に修学旅行が行われるのか。まるでこの先に起こる何かを暗示してるような……… 「ひゃっほー。九州初上陸」 だけど、そんな悪天候は全く歯牙にも掛けない人もいる。わざわざ足を揃えてジャンプして、酒井くんはボーティングブリッジに降り立った。 無事に、追試も終わって、今日から修学旅行。 「今日、何処行くんだっけ」 酒井くんがあたしに訊く。 「太宰府天満宮じゃなかったっけ」 あたしもそんなにしっかり旅程表、読み込んでないけど。 「あーそうそう。それそれ。なんか、母さんがあんたばかなんだから、しっかり拝んでき なさい、って言われた。…何で?」 酒井くん、あたしに聞かないでよ。人選誤ってる。 「学問の神様だから?」 よく聞くフレーズをあたしは酒井くんに伝える。 「頭のいい神様なんだ。てか、神様にも頭いいのとか、悪いのとかいるんだな」 酒井くんがぼそっと呟いてたら。 「祭神は菅原道真。宇多天皇に登用されて、右大臣にまで登りつめた人だよ。学者としても有名で、生家は位が低いにも関わらず、個人の能力を買われて出世したから、学問の神様として、崇められてる…」 ウィキでも丸暗記したような模範的な説明が、酒井くんの後ろから降ってきた。 「け…先生」 「遠藤ちゃん」 制服のあたし達とは違って、今日のけいちゃんは黒のポロシャツに白いスキニーのパンツにスニーカー。いつもは、もうちょい私服のセンスいいのに、微妙にゴルフウェアなのは、他の先生との釣り合いも考えてかな。 「ちなみにこの辺、先週授業でやったんだけどな。お前ら、全然記憶に残ってないんだな」 反応の悪いあたしたちに絶望したように、けいちゃんは溜息をつく。
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