第4章 修学旅行とバースデー

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SIDE Keishi 急に暗くなった空から、大粒の雨が落ち始める。自由時間の終了を告げるみたいなその雨に、みんな慌てて戻ってきて、各クラスのバスに乗り込む。そんな人波の中に、酒井や木塚もいた。 「……?」 彼らの中にあるべき姿がないことに気づいて、木塚に声を掛けた。 「春日は?」 俺の質問の意味がわからないと言うように、木塚は首を傾げた。 「ちぃは先に戻ってるって1時間も前に別れましたけど…」 「戻ってねえよ」 慌てて名簿を確認する。戻ってきた生徒の名をチェックする各クラスの名簿。千帆のところは空欄だ。 木塚の顔色が蒼白になって、酒井は「俺、別れた場所行ってあいつ、探してくる」と雨の中を再び戻ろうとする。 浮足立った俺と彼らの様子に、本田先生が「どうしました?」と不審がった。 「単独行動した生徒がひとり、戻ってきてないんです。とっくに戻ってていいはずなのに」 「名前は?」 「春日千帆」 「先生のクラスの生徒ですね」 「ええ」 厄介事が起きたな…と、溜息をついた本田先生の横で、木塚がスマホを操作してる。恐らく千帆に掛けてるのだろう。しかし彼女の居場所を突き止めるはずの着信音は、何故か俺達のすぐ近くで鳴り響いた。 反射的に音のする方を振り返る。すると、自分の分の他にもうひとつバッグを手にした沖本が立ってた。 「沖本…?」 俺や木塚の不思議そうな視線に沖本は愉快げに口角を上げた。何か知ってる。そんな笑顔だった。 「それ、ちぃのバッグ。どうして沖本さんが…」 「春日さんから預かったの。大切なもの失くしちゃったから、探してから戻る、って。遠藤先生に伝えて欲しい、って伝言つきで」 千帆の手がかりが掴めたのだから、ほっとしていい場面なのに、持って回ったような沖本の言い方に増幅するのは不安だけだ。 大切な、もの…? 「春日は何処にいるんだ、沖本」 バッグにはスマホも財布も入ってる、これじゃ千帆は戻って来たくても戻って来れないじゃないか、悪意しか感じない。 「こっち来い」 怒りが教師としての領分を侵してく。彼女の腕を引いて、ひと目につかない駐車所の奥に移動した。 「春日は何処?」 「そんなに彼女が気になります?」 「…当たり前だろ」 千帆のバッグを俺の手に戻して、駐車場のコンクリの壁に手をついて、自分の身体と壁で挟むようにして沖本を見下ろした。 「先生…?」 「早く教えろよ」
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