第4章 修学旅行とバースデー

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天満宮についた時には、少し雨が降り出してた。折りたたみ傘を出すほどじゃない、雨粒の小さな霧雨。まだ志望校も決めてないのに、受験が成功するようにお参りして、七海とお揃いの合格祈願守りも買った。 ふたりでぷらぷら石畳の参道を歩いていたら、目につくものがあった。 バスの集合時間があと10分と迫ってるのに、けいちゃんの周りには、あちこちのクラスの女の子が群がってた。 「写真一緒に撮ってくださ~い」とか「先生、おみくじ引いた?」とか。学校行事の一環ではあるけど、授業とはまた違うから、女の子達もより積極的だ。 「相変わらず凄いね…。背高いからわかるけど、あれであと10センチ低かったら、埋没しちゃってうちら、担任見失っちゃう」 七海がそんなけいちゃんを横目に、ポツリと言う。それから、あたしの横にこそこそとカニ歩きで近づいてきて、耳打ちする。 「ねえ、誕生日、何か約束した?」 「ううん。約束どころか、誕生日だって、教えてもない」 「え~」 何で、と七海は不満げにあたしに詰め寄る。 「だってさあ、どうせ無理だもん。あたし、職員用のしおりも見ちゃった。もっと細かくてもっと忙しいの。食事の誘導から就寝前後の見回りから。教えちゃうとサプライズとかけいちゃん何かしてくれないかな、とか期待しちゃうじゃん。だから言わなかった」 旅行から戻ってから、18才になったこと教えた時に『おめでとう』って言ってくれて、知らなかった、って悔しがってくれれば、それでいい。 「ちぃ、健気過ぎるよぉ。愛人みたい」 あたしがよっぽど不憫に見えたか、七海はあたしの肩にしがみついてきた。え、そこまで日陰人生じゃないよ。今年1年だけのことだし。 けいちゃんと一緒の写真は、何処かで撮りたいなあ…なんて、願望はあったりするけど。
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