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「なーに、レズってんの?」
ふざけてたら、からかう声が飛んできた。見ると、梅ヶ枝餅を手にした酒井くんだった。
「食う?」
と食べかけのを出されて、あたしはふるふると首を振る。思ったより大きくて甘くて飽きちゃったらしい…て、子どもっ。
「何だ、酒井か」
と七海もまるで犬でも寄ってきたみたいな顔をする。
「あんた、やたらちぃに纏わりついてない? 仲良しの金谷くんは何処行っちゃたのよ」
「あー、それがさ」
酒井くんはまたまた白い歯を見せてにっと笑って、背後を親指で指す。参道に並んだ石灯籠の影に、酒井くんの親友の金子くんと同じクラスの広川さんの姿があった。
手が触れそうな距離で話し込むふたりは、あたしと七海と酒井くんの周囲とは全く違う甘ったるいオーラで包まれてる。漫画で言うなら、ハートでも舞ってそうな。
「…付き合ってたっけ? あのふたり…」
七海と目を合わせて聞くと、酒井くんは得意気に言う。
「3日前から付き合ってるぜ」
「へぇぇぇ」
「ほぉーっ」
…増えるよね、修学旅行ってそういうの。ああ、それで酒井くんあぶれちゃって、あたしの周り徘徊してるんだ。ちょっと可哀想。
けいちゃんに忠告されたことは、まるきり頭から抜け落ちて、あたしは勝手に納得してた。
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