第5章 夏の迷い道

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「けいちゃん、先生みたい」 「先生なんだよ」 「…先生になって良かった、って思ってる? やめれば良かった、って思ってる?」 あたしとのことは抜きにしても、けいちゃんは今自分が就いてる仕事のこと、どう思ってるんだろ。 帰りが遅かったり、帰って来ても授業の内容わかりやすくまとめたり、教師の仕事って思ったよりも大変そう。 「うーん、そうだね」 とけいちゃんは、腕を組んでちょっと悩んだポーズを取る。 「思ったより大変だけど、やりがいもあるから、後悔はしてないよ。歴史の知識とか、司書の資格とか、培った自分の強みを活かせるのは悪くないしね」 けいちゃんは、自分のお仕事好きなんだ…って、なんだかあたしまで誇らしくなった。 けいちゃんは、確かにイケメンで教壇に立ってるとこ、すっごくカッコイイ。でも、人気があるのって、きっとそれだけじゃない。 わかりやすい授業とか、生徒ひとりひとりの名前だけじゃなくて、性格とか所属の部活とかも知ってて、ひとりひとりときちんと向き合ってる。生徒の側ってそういう先生の資質とか能力に敏感だから、すぐにわかっちゃうんだよね。いい先生かどうかって。 「天職なんじゃないですかあ?」 からかうと、けいちゃんはにやりと笑って、あたしの隣に回りこんできた。 「教え子に手を出してる時点でそれはないな」 あたしを膝の上に乗せて、けいちゃんは後ろからあたしを抱きしめる。あたしの後ろ髪を大きな手で掻きあげて、現れた項に、けいちゃんは熱い唇を落とす。 「…や…っ」 くすぐったくて、反射的に振り返ると、今度は唇を塞がれた。 「せ、んせ…」 「ばか、煽るなよ」
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