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「けいちゃん、先生みたい」
「先生なんだよ」
「…先生になって良かった、って思ってる? やめれば良かった、って思ってる?」
あたしとのことは抜きにしても、けいちゃんは今自分が就いてる仕事のこと、どう思ってるんだろ。
帰りが遅かったり、帰って来ても授業の内容わかりやすくまとめたり、教師の仕事って思ったよりも大変そう。
「うーん、そうだね」
とけいちゃんは、腕を組んでちょっと悩んだポーズを取る。
「思ったより大変だけど、やりがいもあるから、後悔はしてないよ。歴史の知識とか、司書の資格とか、培った自分の強みを活かせるのは悪くないしね」
けいちゃんは、自分のお仕事好きなんだ…って、なんだかあたしまで誇らしくなった。
けいちゃんは、確かにイケメンで教壇に立ってるとこ、すっごくカッコイイ。でも、人気があるのって、きっとそれだけじゃない。
わかりやすい授業とか、生徒ひとりひとりの名前だけじゃなくて、性格とか所属の部活とかも知ってて、ひとりひとりときちんと向き合ってる。生徒の側ってそういう先生の資質とか能力に敏感だから、すぐにわかっちゃうんだよね。いい先生かどうかって。
「天職なんじゃないですかあ?」
からかうと、けいちゃんはにやりと笑って、あたしの隣に回りこんできた。
「教え子に手を出してる時点でそれはないな」
あたしを膝の上に乗せて、けいちゃんは後ろからあたしを抱きしめる。あたしの後ろ髪を大きな手で掻きあげて、現れた項に、けいちゃんは熱い唇を落とす。
「…や…っ」
くすぐったくて、反射的に振り返ると、今度は唇を塞がれた。
「せ、んせ…」
「ばか、煽るなよ」
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