第5章 夏の迷い道

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抑止力になると思った呼び名は、却ってけいちゃんを興奮させてしまったらしい。先生。けいちゃん。どっちの顔もあたしは、好き。 首だけをけいちゃんに向けてたあたしの下顎を大きな手で固定して、けいちゃんはもう一度キスしてくる。 ぬるりと差し込まれた舌先は、簡単にあたしのそれを捉えて、きつく吸われると、頭の芯がぼーっとなっちゃう。なのに胸の奥とか、お腹の下辺りがもぞもぞと疼き出す。 もっと触れて欲しい。あたしの身体の要求を、あたしはけいちゃんに言うことなんて出来ない。怖いし、恥ずかしい。でも。 甘い魔法をあたしの身体に掛けたまま、けいちゃんはキスを解いてしまった。 「やべ、ブレーキ壊れそう」 苦笑いしてけいちゃんは、空のコップを持ってキッチンに行ってしまう。 …そういえば、あれからキス以上のこと、けいちゃんしてこないなあ。ゴムがないって言うから、あたしがけいちゃんを手と口で気持ちよくさせてから。 続きがないのは、あたしが『生徒』だからだよね。大切にされてるのはわかってるのに、どうして不安になっちゃうんだろ。 けいちゃん、あたし早く大人になりたい。
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