第5章 夏の迷い道

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嘘、バレてる。焦りが顔に出てしまったのか。 「はは、やっぱりな」 お見通しだ、と言いそうな顔で酒井くんは笑った。 酒井くんに頼まれたこと。それは。 「航、行けーっって、大声で俺の応援してくんない?」ってやつ。ファーストネームの呼び捨て、しかも公衆の面前。 「ご、ごめん、恥ずかしくて」 「あはは、いいよ。ムリだろうなと思ってたし。けど、お前のお陰で、俺、午後の決勝も出れるんだ」 「凄い」 「まだ時間あったら、そっちも観て行ってよ」 「観てくよ、もちろん。決勝なんて凄いよ、酒井くん。これに勝つとどうなるの?」 「勝ったら、県大会。でも、決勝は早い奴ばっかりだから、難しいだろうな」 そっか、県大会か。勝ったら凄いな。 席に戻って、七海とお昼を買いに、売店に向かう。丁度午前中の競技も終了したとこで、売店は混み始めていた。 「カレーにする? ラーメンは暑いよね」なんて言い合いながら、売店の看板の下に吊り下がってるメニューを端から見てくと、見覚えのある後頭部にぶつかった。 「…けいちゃん?」
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