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嘘、バレてる。焦りが顔に出てしまったのか。
「はは、やっぱりな」
お見通しだ、と言いそうな顔で酒井くんは笑った。
酒井くんに頼まれたこと。それは。
「航、行けーっって、大声で俺の応援してくんない?」ってやつ。ファーストネームの呼び捨て、しかも公衆の面前。
「ご、ごめん、恥ずかしくて」
「あはは、いいよ。ムリだろうなと思ってたし。けど、お前のお陰で、俺、午後の決勝も出れるんだ」
「凄い」
「まだ時間あったら、そっちも観て行ってよ」
「観てくよ、もちろん。決勝なんて凄いよ、酒井くん。これに勝つとどうなるの?」
「勝ったら、県大会。でも、決勝は早い奴ばっかりだから、難しいだろうな」
そっか、県大会か。勝ったら凄いな。
席に戻って、七海とお昼を買いに、売店に向かう。丁度午前中の競技も終了したとこで、売店は混み始めていた。
「カレーにする? ラーメンは暑いよね」なんて言い合いながら、売店の看板の下に吊り下がってるメニューを端から見てくと、見覚えのある後頭部にぶつかった。
「…けいちゃん?」
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