第5章 夏の迷い道

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きっとそうなるかもしれない。でも、今あたしが好きなのはけいちゃんで。歴史と恋愛にIFはない、って言い切ってたけいちゃんの台詞を噛み締めながら歩いてた。 ゆっくり歩きすぎたのか、2本めのバスにも追いぬかれて、やっと駅に着いた。ラッシュが始まってて、構内は混雑してた。あたしと酒井くんの乗る電車は別々で。 「送ろうか?」 酒井くんはそう言ってくれたけど、あたしは断った。 「わかった。夏休み入っちゃったから、これでしばらく春日に会えないな」 「…そうだね」 「ちょっとくらい寂しそうにしてくれてもいいのに」 「あ、ごめん」 「そこで謝るか? お前ってホント…」 酒井くんは呆れたように笑った。重ね重ねすみません。鈍くて。 「ま、いいや。元気でな、春日」 「…うん」 「暇だったらいつでも遊んでやっから」 何故に上から? でもまあいいや。 高校最後の夏休み、そしてけいちゃんと過ごす初めての夏はもう、始まってた――。
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