282人が本棚に入れています
本棚に追加
きっとそうなるかもしれない。でも、今あたしが好きなのはけいちゃんで。歴史と恋愛にIFはない、って言い切ってたけいちゃんの台詞を噛み締めながら歩いてた。
ゆっくり歩きすぎたのか、2本めのバスにも追いぬかれて、やっと駅に着いた。ラッシュが始まってて、構内は混雑してた。あたしと酒井くんの乗る電車は別々で。
「送ろうか?」
酒井くんはそう言ってくれたけど、あたしは断った。
「わかった。夏休み入っちゃったから、これでしばらく春日に会えないな」
「…そうだね」
「ちょっとくらい寂しそうにしてくれてもいいのに」
「あ、ごめん」
「そこで謝るか? お前ってホント…」
酒井くんは呆れたように笑った。重ね重ねすみません。鈍くて。
「ま、いいや。元気でな、春日」
「…うん」
「暇だったらいつでも遊んでやっから」
何故に上から? でもまあいいや。
高校最後の夏休み、そしてけいちゃんと過ごす初めての夏はもう、始まってた――。
最初のコメントを投稿しよう!