第6章 初めての夜、初めての朝

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ぽすん、とあたしの後頭部にけいちゃんの手が置かれて、あたしのおでこはけいちゃんの肩先に押し付けられた。 …我慢、なんて思ってないのに。人前でけいちゃんの名前呼ばないのも、他の人と一緒にいるのも、それは全部、我慢じゃない。けいちゃんといるための努力。 でも、今日は恋人モード全開で楽しみたいから、あたしはけいちゃんの提案に全体重で乗っかった。 「いいの? じゃあ、絶叫マシン全制覇」 「はいはい」 「あと、観覧車でちゅーしたい」 「ベタだね、千帆」 「それとね…」 「うん」 あたしはゴクンと生唾を飲み込む。本当に言いたいことは、まだ隠しておいて、けいちゃんの前に手を出した。 「手、繋ぎたい」 「お安い御用」 特急列車の滑らかなシートの上で、あたしとけいちゃんの手が重なった。繋いだ手、離さないで。今日が終わるまでは。
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