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あたしとけいちゃんはいつの間にか、手を繋いだまま眠ってて、車内のざわついた様子で目が覚めた。
「やべ、今何処?」
「え、っと」
丁度掛かったアナウンスで次が降りる駅と知って、ふう、と安堵の溜息ついて、降りる準備を始めた。
「けいちゃん、来たことある? この遊園地」
「初めて。千帆は?」
「あたしも初めて」
駅を降りると、すぐに入場口があって、様々なアトラクションの向こうに富士山が見えた。
「わあ」
「すげーロケーション」
あたしはテンションマックスで、「こっちこっち」とけいちゃんの手を引いて、走る。最初に乗るのは、コレ、って決めてあったから。
「最高速度170キロ越えってありえね~」
脇腹抑えて、ふらふらしながら、けいちゃんが歩く。世界最高速度のローラーコースターのスピードは凄まじかった。
「スピード感ハンパなかったね! 超気持ちよかった。次はねえ」
パンフレット片手に、次のターゲットを探し始めるあたしに、けいちゃんは苦笑いする。
「若いねえ、千帆」
「けいちゃんがおじさんなんだよ」
「23の男掴まえて、おじさんとか言うなよ」
「ねえねえ、回転数が世界一なのと、落下傾斜角が世界一なの、どっちがいいかな」
「…どっちでもいいよ」
けいちゃんは、げんなりしながら投げやりに言った。まだ、最初のアトラクション終わったばっかりなのに。
最終的に両方乗るのなら、近い方にしておけば? けいちゃんのアドバイスで、並んだコースターは90分待ちの立て看板があった。…平日なのに、さすが夏休み。
「この炎天下で90分」
大きくため息をついてから、帽子のツバを持って、けいちゃんが襟元に風を仰ぐ。けいちゃんの素顔を見て、並んだ列のいくつかの女の子同士のグループが、こっちを見てひそひそ話してる。
…学校じゃ、けいちゃんのイケメンぶりにみんな慣れてきたから、この感じ久しぶり。
かっこ良くても好みでもダメだもん。…あたしのだから。
「あの人カッコイイ」あたしと同じくらいの女の子4人組のぼそっとした呟きに、対抗するようにけいちゃんに腕に腕を絡めた。
「どしたの、千帆」
「けいちゃんはあたしのだってアピってみた」
「何だそれ。じゃ、俺もやってみる」
けいちゃんは笑いながらも、あたしの腕をそのままにしておいてくれる。
…時間、止まればいいのにな。
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