第8章 文化祭と彼と彼女

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「茶屋ってさ…これ、マジなの?? ?お前ら」 黒板にびっしり書かれたコンセプトから、店の内装のアイデアから、売り子のコスチューム、メニューまで、びっしり書き込まれたそれを見て、けいちゃんはちょっとあきれたような声を上げた。 今日のLHRでの議題は来月初めにある文化祭の模擬店。 食べ物屋、ということは満場一致だったんだけど、ちょっと変わったのにしよう、ってことで、あれよあれよと決まったのが、時代劇なんかによく出てくるお茶屋さんだった。 イメージとしては、木のベンチに緋色の毛せんを敷いて、紅い傘を差し掛けて、お団子やあんみつなどを提供する。売り子さんは手作りの着物という凝り用だ。 「ダメですか?」 文化祭の実行委員で、本日の議長の金子くんが心細げに首を傾げた。 「いやダメじゃないけど…。受験生の癖にえらくめんどくさいのやるのな」 「最後だからでしょー!? ?記憶に残るやつにしないと」 酒井くんは対象がなんであっても熱いなあ。 「じゃあ、頑張って。部活や予備校やらでみんな忙しいと思うけど、役割分担もうまく割り振って、楽しい文化祭にしてください」 先生らしくLHRを締めてから、けいちゃんは黒板を見つめた。 「これ、消していい?」 「ちょ、待ってよ、遠藤ちゃん、まだか書き写してねえ」 「お前くらいみたいだぞ、終わってないの、誰かに見せて貰え」 無情に言ってけいちゃんが、黒板消しですみからすみまで文字を消してく。 文化祭かあ。 うちの学校は、体育祭と文化祭が隔年で行われる。2年に1回だからその分、模擬店もステージも気合いの入った派手なものになる。 後夜祭では、全校生徒のダンスもあるし。 …ちょっとくらい、けいちゃんとふたりだけで楽しめたらいいな。…無理かな。
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