第8章 文化祭と彼と彼女

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その日の放課後から、みんなで大道具屋小道具を作ったり、買い出しに行ったりする班を決めたりで、居残ることが多くなる。 あたしは当日の売り子と買い出し班。会計の子から貰ったお金を貰って、駅向こうの文具屋さんまで、材料を買いに行くことになった。 「遠藤先生」 昇降口に向かう途中、階段の上からけいちゃんの姿を見つけて声を掛けた。階段の踊り場でけいちゃんが足を止めて、こっちを見上げた。 「春日、木塚。準備、いいのか?」 「これから、買い出しです」 答えながら、けいちゃんのところまで降りていった。 「そっか、気を付けてな」 「はい」 「教師として参加する文化祭ってのも、なんか変な感じ」 「先生の時はどんなことしたんですか?」 「いや普通に、外で屋台みたいの出して、ひたすらたこ焼き焼いてたり、教室中にダンボールで迷路作ったりした記憶が…」 けいちゃんが作ったたこ焼き。食べてみたかったぁ~~~。あ、そういえばうちにたこ焼き器ある。けいちゃんちに持ち込めば作ってくれるかな。 るんるんな妄想してるうちに、けいちゃんは「じゃ、頑張って」と行ってしまう。もう慣れたけど、やっぱり校内のけいちゃんはそっけない。 七海と校門を出たところで、すらっとした後ろ姿が目に入った。オフホワイトのパンツスーツにヴィトンのショルダー。うわ、嫌な人を見つけちゃった。 …小野先生だ。 思わず七海と目を合わせてしまう。あたしと直に接点持ったのは、あの遊園地だけだし。今だってクラスも授業も受け持たれてないから関係ない、と思う。 思うけど、出来るだけ遠ざかりたい。 (ゆ、ゆっくり歩こ)
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