第9章 凍った月

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半分残ってる冷め切ったコーヒーはシンクに捨てて、俺は支度を始める。顔を洗って髭を剃り、髪をセットして、着替えて…何分にこれ、と時間までほぼ定刻の朝のルーティン・ワーク。 SHRで朝の教室に入っても、やっぱり千帆は俺の顔すら見なかった。俯いたまま、スカートをぎゅっと握りしめた拳。今の千帆は、みつきと別れた頃の俺に似てる。 相手の言葉は遮断して、被害者意識ばっかり増大させて。現実をまともに直視しないで、内に内に意識が向かう。 千帆の気持ちも確かめないで、一方的にお母さんとの約束に同意した俺も悪いんだろうけれど。 たった半年、だよ。千帆。4月の始業式のあの時とは俺の意識も、千帆への感情も大きく変化してきてる。 俺がお前から奪おうとしてる時間は、半年なんて、比じゃないくらい長い。これからずっとずっと長い時間傍にいればきっと、今のこのことなんて笑い話に出来るんだろう。でも、まだ18の千帆に、そんな長いスパンでモノを見ろ、って方が無理なのかもしれない。 どうやってそれを千帆にわからせようか、首を捻りながら俺は、教室を出た。
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