第9章 凍った月

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何でこんな大事なものが、よりにもよって彼女の手に? もう、あたしのばかばかばかっ。 「いい趣味よね…先生に、コスプレさせて2ショットなんて」 文化祭の時の制服姿のけいちゃんとの2ショット写真。 だって、それは。 もしも、けいちゃんがあたしと同じ学生だったら…って、あたしの願望が実現した宝物の写真なんだもん。 「返してください…っ」 「返すわよ。私には、必要ないもの。でも、その前に――貴女と話したいことがあるの。 ちょっと付き合ってくれない?」 「あたし、用事が…」 「じゃあこれはこのまま、学校の事務所に忘れ物として提出するけどいい? この写真とかも、もちろん見られちゃうわねえ、学校関係者に。事務の矢作さん、なんて思うかしら」 みつきさんは、あたしの後ろ暗いところをバシバシと突いてくる。あたしに拒否権なんかあるはずもなかった。 階下に向かっていたはずのみつきさんは、踵を返して階段を上っていく。最上階の突き当り、屋上の扉を開いて、白いコンクリの上に立つと、こう切り出した。 「私、貴女を何処かで見たことがある、って言ったでしょ? 思い出したの、何処で会ったか…。そして、貴女ももちろんそのことを憶えてる。だから、髪切ったの? 少しでも印象が変わるように」
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