264人が本棚に入れています
本棚に追加
「…何のことだかわかりません」
「流石にしらばっくれるのは慣れてるわね。そうやっていろんな人に誤魔化してきたんでしょ? 貴女も慧史も。じゃあ、具体的に言うわね。今年の7月25日。山梨県のレジャー施設で、私が慧史に声掛けた時、隣にいたのは貴女だったんでしょ? 逆光で帽子まで被ってたから、はっきり顔覚えてなかったけど、この写真…」
そう言って、みつきさんはあたしが大切に挟んでおいた写真をかざす。
「慧史と貴女の雰囲気とか、慧史の表情でわかった…」
何処かさみしげにみつきさんは呟いた。
「どうせ慧史から、聞いてると思うけど。私、昔彼と付き合ってたの」
「…そう、なんですね」
あたしは慎重に相槌を打つ。まだ、全部バレたわけじゃないもん。まだ、ごまかせる。だから、彼女のカマかけに乗っちゃいけない。
「貴女の大事な写真勝手に見たお詫びに見せてあげる。大学の時の慧史」
そう言って彼女はパスケースの中を開いた。見たくないのに、目が吸い寄せられる。写真て残酷だ。
現在(いま)がどうであれ、切り取った瞬間は永遠に残る。ちょっとだけ髪を明るく染めたけいちゃんは、今より少しあどけなく笑ってる。隣にいるみつきさんの肩をしっかりと抱いて――
こんなけいちゃん、あたし知らない。
最初のコメントを投稿しよう!