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我が吹奏楽部は一つの問題を抱えていた。
それは「部員不足」であった。
吹奏楽部は昔、全国大会で金賞を取るほどの強豪校であった。
だが、先生の突然の辞職、部員内でのトラブル、学校のイメージアップ戦略に伴う部費の減少により、人数は9名にまで墜ちた。
そんな中で迎えた4月、俺は部活紹介で行う曲の確認をしながら学校に迎えた。
新入生が入った分、バスか3月に比べて混んでいる。その内、吹奏楽部に何人入ってくれるのだろうかと考えたりもしたが、すぐに止めた。
今の部活は人数が少なく魅力が薄いのは入ってる自分が一番理解していたからだ。
そんな風に現実と格闘していると、後ろから甘い臭いがしてきた。
お菓子か? それとも香水なのか?
気になり、後ろを振り替えるとそこには可愛い少女の姿があった。
雰囲気は冷たく、高貴な感じが漂う一言で表すとしたら「お嬢様」が似合いそうな少女だった。
見かけたことがなかったが、新入生なのか?
少女のことをしばらく見ていると、少女と目があった。
目が赤い。ハーフの子なのかな??
「なにか、私にご用でしょうか?」
少女から話しかけられた。やば、もしかして見てたのバレた?
「いや、後ろの方から甘い臭いがしたから振り向いただけだよ」
「ふーん……あら、その紙はもしかして譜面でして?」
「え? あぁ、そうだけど」
「見せてもらえます?」
「いいよ」
俺は譜面を少女に渡した。
曲は『sing sing sing』 ジャズの中でも有名な曲で吹奏楽でもよく演奏される曲である。
「ふーん……Sing, sing, sing, sing Everybody start to sing」
「え!? 歌詞なんてあったの?」
「あんた知らないでよく演奏出来たわね。 sing sing singはもともと歌なのよ」
「へー、知らんかったわ」
「そんなんじゃ吹奏楽部もたかが知れてるわね。 ありがとう、邪魔したわね」
な、なんだこの女は!? むっちゃ腹立つわー!
ちょっと可愛いからって調子に乗りやがって!!
俺は朝からムカつきながら学校に向かい、学校で大音量で朝練をした。
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