一小節目

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__4限終了__ 「んじゃぁ、俺準備してくるわ」 「おう、俺もさっさと着替えてシュートの練習しなくちゃな」 授業が終わると、部活をやっているやつらはそれぞれの練習場所に散った。 一年生が残りのガイダンスをしている間に部活紹介の準備をするためである。 おれも例外ではなく、そそくさと音楽室に向かった。 「よう、宮嶋。」 「霧島(きりしま)パイセン、お疲れさまっす」 「そのパイセンって呼び方さー、やめない? 敬われてる感ゼロだし、後輩も真似するでしょ」 「まぁ、真似をしたらしたで一ヶ月の辛抱っすよ」 「本当にふざけてるわね。あんた」 「こんなこと言うの、貴方だけですよ」 こんな感じで、部長との会話はこんなものだった。 吹奏楽部は音楽室で簡単なアップと演奏の合わせを行ったあと、体育館に向かった。 合わせは上々、あとは本番を残すだけだった。 体育館に向かう途中、部長が俺の横に並んで耳元で小さく囁いた。 「なんかあったの? 今日はやけに静かじゃん」 そういえば、演奏中も終始謎の少女のことが頭から離れなかった。 「朝、変な女にあったんですよ」 「変な女? なにそれ?」 「おそらく新入生だと思うんすけど、なんかいきなり譜面を見せろとかいってくるし、色々いちゃもんつけてくるし、年下の癖に高圧的だし」 「ちょっと待って、譜面は読めてたの?」 「えぇ、しかも曲自体も知っていましたよ」 「それってさ、経験者なんじゃないの? しかも中低音の楽器の経験者」 うちの部活は慢性的な低音楽器不足に悩んでいた。しかも、入ってきても未経験者や楽器すらやったことがない初心者ばかりで、上達するまでに時間がかかっていた。 そんな中で経験者がいたということは部活にとってチャンスなのである。 「その可能性もありますが、僕はそうでないと思います。 彼女、唇をいじるしぐさをしてませんでしたし」 金管楽器をやっている人は唇が乾くと演奏できなくなるため、定期的にリップクリームを塗ったり、無意識に唇を舐めたりすることがある。 しかし、彼女はそんな様子はなかった。 「そうだったの? だったらなんで読めたんだろうね」 「多分ピアノでもやってたんじゃないんですか? 一応左手の譜面はヘ音記号でかかれてますし、それよりも、もうそろそろ俺たちの番ですよ。」 「あら、もうそんな時間なの? んじゃぁ、行かないとね」
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