一小節目

3/5
前へ
/14ページ
次へ
俺たちは舞台端から舞台に上がった。 目の前には新入生がずらっといる中に見覚えのある髪があった。 やはり一年生だったのか。 いつまでも引きずっていても仕方ない。 俺はやるべき仕事をやろう。 演奏はドラムの軽快なリズムから始まった。そのドラムの裏で部活紹介が始まる。 俺は、トロンボーンに軽く息を入れて楽器を温めた。春になったが温度はまだ高くなく、体育館も制服だけでは少し肌寒い位だった。 俺は部活紹介と終わると同時に吹き始めた。 人数がいれば俺だけではなく他の人もいたのだが、生憎人数不足でソロのようになっていた。 しかし、会場は思った以上に盛り上がっていて、正直驚いていた。 その後の演奏も上手くいき、部活紹介も滞りなく進んだ。 そして、部室に戻る途中に部長から肩を叩かれた。 「相変わらず盛り上げるのうまいよね」 「ありがとうございます。 演奏は大してうまい訳じゃないんですけどね」 「なんか秘訣とかあるの?」 「うーん、特に意識していることはないんだけどー…あ、よく動きますね」 「それだけ??」 「そんなもんですよ」 「ふーん」 そして、音楽室に帰って練習していると、わらわらと一年生たちが音楽室にやってきた。 そういえば、仮入部は今日からだったのか。 そして、わらわら入ってきた一年生の中にあの少女もいた。 少女と目が合うと、少女は俺の方に歩いてきた。 少女は目の前まで来ると、立ち止まり俺をじっと見つめた。 演奏が気に入らなかったとでも言いたいのか?? 「あんた……あの演奏はどこで習ったの?」 「は?? 特に習ってないぞ?」 「嘘でしょ!? だってあの演奏は…」 「もう一度言うが、俺は演奏について指導を受けたことは一度もないぞ? ましてや御前が考えてるほど俺は上手くないし」 「そう、まぁいいわ。 ありがとう」 それを言い残すと、少女は音楽室を出ていった。 あいつは俺の演奏について聞いてきた。 しかし、いった通りで俺は誰かに指導してもらったこともないし、部活以外で演奏なんてしたことない。 なにか引っ掛かる。 「なに? あの子、感じ悪くない??」 同級生の伊藤 真(いとう まこと)が不機嫌そうに近寄ってきた。 「まぁ、そう言ってやるな。 他の子を見てるし、良い印象を与えないぞ」 俺はそうなだめると一日目の仮部活が始まった。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加