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俺たちは舞台端から舞台に上がった。
目の前には新入生がずらっといる中に見覚えのある髪があった。 やはり一年生だったのか。
いつまでも引きずっていても仕方ない。 俺はやるべき仕事をやろう。
演奏はドラムの軽快なリズムから始まった。そのドラムの裏で部活紹介が始まる。
俺は、トロンボーンに軽く息を入れて楽器を温めた。春になったが温度はまだ高くなく、体育館も制服だけでは少し肌寒い位だった。
俺は部活紹介と終わると同時に吹き始めた。
人数がいれば俺だけではなく他の人もいたのだが、生憎人数不足でソロのようになっていた。
しかし、会場は思った以上に盛り上がっていて、正直驚いていた。
その後の演奏も上手くいき、部活紹介も滞りなく進んだ。
そして、部室に戻る途中に部長から肩を叩かれた。
「相変わらず盛り上げるのうまいよね」
「ありがとうございます。 演奏は大してうまい訳じゃないんですけどね」
「なんか秘訣とかあるの?」
「うーん、特に意識していることはないんだけどー…あ、よく動きますね」
「それだけ??」
「そんなもんですよ」
「ふーん」
そして、音楽室に帰って練習していると、わらわらと一年生たちが音楽室にやってきた。
そういえば、仮入部は今日からだったのか。
そして、わらわら入ってきた一年生の中にあの少女もいた。
少女と目が合うと、少女は俺の方に歩いてきた。
少女は目の前まで来ると、立ち止まり俺をじっと見つめた。
演奏が気に入らなかったとでも言いたいのか??
「あんた……あの演奏はどこで習ったの?」
「は?? 特に習ってないぞ?」
「嘘でしょ!? だってあの演奏は…」
「もう一度言うが、俺は演奏について指導を受けたことは一度もないぞ? ましてや御前が考えてるほど俺は上手くないし」
「そう、まぁいいわ。 ありがとう」
それを言い残すと、少女は音楽室を出ていった。
あいつは俺の演奏について聞いてきた。 しかし、いった通りで俺は誰かに指導してもらったこともないし、部活以外で演奏なんてしたことない。
なにか引っ掛かる。
「なに? あの子、感じ悪くない??」
同級生の伊藤 真(いとう まこと)が不機嫌そうに近寄ってきた。
「まぁ、そう言ってやるな。 他の子を見てるし、良い印象を与えないぞ」
俺はそうなだめると一日目の仮部活が始まった。
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