序章 もう一度

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一人の女性アナウンサーがマイクを持って話し始める。 『バンドロイドが誕生してかなりの年が経った、この世。彼女達の歌声は様々であり、聴く日はないではないでしょうか?かつて人間たちがバンドをしていたという日がまるで嘘のようなロボットの発達。そして今、全バンドロイドの中でも完全にトップに立つ者たちがこの空間にまた華を咲かす。その名も”BANDROID”』 ステージ上に滑らかに出てくる人間。いや、正確に言うと違う。奴らはロボットだ。 「いつか……」 私はつぶやいた。 「私がメンバーを揃えてそこに立ってみせる」 それは私が昔から思ってたことだ。図書館で調べたことがあった。昔は人間がロボットに歌声を吹き込ませていた。しかし徐々に技術が発展し、ギターやベースなどの個々の楽器を弾くようになった。また、彼らは人間同様にそれをハーモニーさせることを覚えた。さらには作詞や作曲を人間の手を借りずに作ることも可能になった。 そんな中で人間はというとだんだんバンドを離れるようになってしまった。いや、正確に言うと最近ではほんの少しだけ人間がバンドを組んでしているが売り上げはロボットに負けている。 私はロボットにバンドを乗っ取られている世界なんて嫌だ。だから私は……。 そう思っている者がいたら。集まってくれるのなら。ただの夢や希望で終わりじゃなくなる。そしてそれを聴く者が広がればロボットに勝てる。 ステージの上で歌う者に勝つために。
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