第2章

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「あの……私お金無いので」 「無料でいいですよ」 私が断ろうとすると、前に立った無表情の運転手さんは、行き先を聞く前に無料でいいと言ってきた。 タクシーなのに無料ってどうなんだろう。とても怪しい。 本当に乗っても大丈夫なのかと色々な可能性を考えた私だったが、これを逃せば野宿が確定だろうと思うと、結局その怪しげなタクシーに乗ることになってしまった。 そうして乗り始めて十分ぐらい経ったが、行き先を告げてからはなにも喋っていない。 無言の車内、その怪しいタクシーは山道に入っていく。 もしこの運転手さんが悪い人だったら…… 私の額に冷たい汗が滲み始めた。 「結構遠くから来られたんですねぇ」 そんな私に隣から突然話しかけてくる運転手さん。ビクッとなりながらも、私は ええ。とだけ返す。 「ヒッチハイク大変だったでしょ? ここの人はあまり止まってくれないから」 運転手さんは表情を変えずに、話を続けてきた。 「そうですね」 「何時頃からしてたんですか?」 必要最低限な言葉しか返さない私に対し、運転手さんは質問を続ける。 それは止まることはなく、何度も何度も続いた。 聞かれては答える。聞かれては答える。 その無機質な会話をしばらく繰り返していると、不思議なことに私の心がなんとなく安心で満たされていくような気がしてきた。 「どうして私を拾ってくれたんですか?」 そして遂に無意識の中で、私の口から運転手さんへの質問が飛び出す。 それはタクシーに乗り始めてからずっと気になっていたことだった。 「あなたがヒッチハイクしていたからですよ」 「あの時はもう止めてましたよ」 「いいえ、してました」 何もしていなかったと思うんだけど。 私のそんな気持ちを感じ取ったように運転手さんは続ける。 「あなたの顔がね、誰か助けて!って言ってたんです」 私には分かるんですよ。 初めて運転手さんが少しだけ笑みを浮かべた。 私はこの人に心が読まれていたのかと思うと、少し恥ずかしくなり、顔を赤らめる。 どうせ読まれているなら…… それから私は自分の話をし始めた。
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