第10章 聖夜の奇跡

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「38度8分。これ、ダメですね、帰った方がいいですよ、遠藤先生。今日、もう授業ないんでしょ?」 養護教諭の奥山先生はそう言って、体温計を俺の目の前に突きつけた。自分でもやばそうだと思ったけど数字であからさまに表現されると余計に体力も気力も萎えていく…道理で、保健室のベッドで毛布にくるまっても寒いと思った。 仕方なく帰る旨を告げると、校長が意外なことを言い出した。 「ひとりで帰れますか? 遠藤先生。タクシー呼んだ方がいいですよ」 「いや、車だしそこまでは」 「だったら私が送りますよ」 手を挙げたのはみつきだった。 大丈夫だと言いはっても、以前同じように熱を出した奥さんが車を運転してて自爆事故に遭ったという校長は許してくれない。まあねえ、このご時勢、教員が人身事故なんて起こしたら大問題だしね。結局、俺は運転席をみつきに明け渡した。 「校門出たら右…」 ナビをしようとしたら、みつきはくすくす笑う。 「わかるから平気よ。あなたは寝てていいわ」 そう言って、慣れた手つきで俺の車を走らせる。家までは15分程、うつらうつらしてたら、みつきに肩を叩かれた。
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