第10章 聖夜の奇跡

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「もうもう、信じられないっ」 あたしは腕組みして、オトナ3人を睨みつける。あたしの知らないとこで結託して、仲良くなって、挙句あたしを驚かそう…なんて、ひどいひどすぎる。 「怒らないでよ、千帆」 「怒るよ、フツー。けいちゃんまであたしに何も言ってくれなかったなんてひどいっ」 「だって、電話で言いたくなかったし、と言って会う機会もねえ…と思ってたら、お母さんがイブの夜にうちに来ませんか?って誘ってくれたから」 種明かしをされれば、もちろんお父さんお母さんの好意は嬉しい。嬉しいけど、複雑。それに俄に信じがたい事実を確かめたくて、あたしはけいちゃんを上目遣いに見上げた。 「お父さん…結婚認めてくれたの?」 けど、けいちゃんの代わりにお父さんがひとつ咳払いをして答えた。 「あーそのことなんだが…乾杯前に話して置きたい。結婚は認めるが、いくつかこちらら提示したい条件がある」 条件? その内容はけいちゃんも知らなかったのか、にこやかだった表情が急に引き締まった。 美味しそうなご馳走を前に座ったあたしは、そっちには目もくれずに、向かい合わせのお父さんの顔を見て、ごくんと生唾を飲んだ。 (お父さん、何言い出すつもりなんだろ…) 「まず、第一に千帆は絶対志望校合格すること。そしてその大学に4年間通って、学位と教員免許絶対に取ること。それを条件に、学費はこっちで持つ」 「え…」 あたしよりも、けいちゃんのが先に驚いた顔になった。学費って、もしかして…けいちゃんとお父さん、そんな話までしてたのかな。お金のことなんて、まるで考えないで、『大学行く』とか言ってたあたしって…。 「千帆の分の学資保険はしっかり掛けてあります。予定外に早く家を出すことになりそうだけど、学費については親の努めだと思ってますので、先生はお気になさらず」 「あ、ありがとうございます」 「それに付随して…4年間は、子どもを設けないで欲しい」 急に生々しい話になって、あたしは思わず赤面する。けど、けいちゃんは尤もらしい顔で頷いた。 「僕も同感です。千帆には、学業優先で行って欲しいので」 「良かった。学費を出す条件は以上です」 そっかあ、けいちゃんの赤ちゃんは…大学卒業してからかあ。早く欲しかったわけじゃないけど、ちょっと残念。
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