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SIDE Keishi
「今日のところはお帰りください」
予想はしてたけど、まるで犯罪者でも見るような冷たい目つきで言われると、やっぱりそれなりにショックだった。
高校生、それも自分の担任の生徒にプロポーズ。どんなに非常識な行為か自分でもわかってたつもりだけど、面と向かって彼女の父親から拒絶されると、正しいと信じてるつもりでも、価値観が揺らいだ。でも
「だぁって、だってだって、ごめんなさい、けいちゃん。あたしが悪いの、お父さんにちゃんと言っておかなかったから…。それに、お父さんひどい。あんな風に頭ごなしに」
千帆はもっと不安定で、泣いてる千帆を見てたら、ブレそうになる心は、また一本芯が通って、ピンと張り詰めたものになる。もう、泣かせたくないし、不安にさせたくない。
俺がいちばん守りたいのは千帆だから、そのためにいちばん有効な手段を選んでるだけだ。
「最終的に、千帆が手に入れば、俺はそれでいいんだ」
簡単に手に入るとは思ってない。だから、いいんだ。そう、納得して千帆の家を後にしたのに。
喉に引っかかるものを覚えて、家に帰って来てすぐにうがいをした。
風邪薬のCMじゃないけど、俺は体調崩す時は必ず喉からで。嫌な予感に苛まれながら、その夜は早々にベッドに入った。
でも、次の日はもっと悪化していて、しょうがなくネットで休日も診てくれる内科を探して、受診した。風邪だというありきたりの診断を受けて、薬を貰って帰る。
病は気から、なんて言葉があるけど、このタイミングで体調崩すのは、心と身体が直結してるみたいで、ホント嫌だ。千帆にも無駄に心配掛けてるみたいだし。
電話で、授業中に、俺が咳き込む度に、千帆は『大丈夫?』って聞いてきたり、心配そうに俺を見つめてくる。『平気だよ』って、早く安心させたいのに、体調はどんどん悪くなっていった。
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