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「さむっ」
とりあえず、電気をつけて、エアコンを動かしてみる。うぃぃぃんと、爆音を立ててから、温風なのか冷風なのか微妙な風が、吹き出し口から板張りのダイニングに流れ始めた。
「ふーん」
と、けいちゃんは好奇心たっぷりに、水道の水を出してみたり、キッチンの窓を開けてみたりしてる。
「今どき、システムキッチンとかじゃないんだよ? あと、あたしキッチンは対面カウンター式がいい」
こんなボロボロじゃ嫌だとばかりに、あたしはけいちゃんに言う。
1階は廊下の脇からキッチンダイニング。奥にちょっと大きめの和室、いちばん奥にもうひとつちょっと小さめの和室になってる。おばあちゃんやおじいちゃんが住んでた頃は、しょちゅう行き来してたけど、あたしはここに入るのは、1年ぶりくらいだ。
その時にはあったはずの家具も、おじいちゃんやおばあちゃんの遺品も片付けられてて、がらんどうになった室内は妙に広々と感じた。
2階は洋室が3つ。いちばん大きな主寝室にベランダがついてる。
「結構広いね、ここなら余裕でキングサイズのベッド置けるよ、千帆」
「そ、そんなに大きいのいらないよ」
「俺とくっついて寝たいから? えっちだなあ、千帆」
「そーゆー意味じゃないもん…っ。何なら、寝室別々でもいーしっ」
嫌な言い方をして、あたしはその部屋を出ようとする。でも。
「ちーほ」
けいちゃんはあたしの二の腕を掴むと、そのまま自分の胸元に引き寄せて、あたしを背中から抱きしめる。
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