第10章 聖夜の奇跡

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「さむっ」 とりあえず、電気をつけて、エアコンを動かしてみる。うぃぃぃんと、爆音を立ててから、温風なのか冷風なのか微妙な風が、吹き出し口から板張りのダイニングに流れ始めた。 「ふーん」 と、けいちゃんは好奇心たっぷりに、水道の水を出してみたり、キッチンの窓を開けてみたりしてる。 「今どき、システムキッチンとかじゃないんだよ? あと、あたしキッチンは対面カウンター式がいい」 こんなボロボロじゃ嫌だとばかりに、あたしはけいちゃんに言う。 1階は廊下の脇からキッチンダイニング。奥にちょっと大きめの和室、いちばん奥にもうひとつちょっと小さめの和室になってる。おばあちゃんやおじいちゃんが住んでた頃は、しょちゅう行き来してたけど、あたしはここに入るのは、1年ぶりくらいだ。 その時にはあったはずの家具も、おじいちゃんやおばあちゃんの遺品も片付けられてて、がらんどうになった室内は妙に広々と感じた。 2階は洋室が3つ。いちばん大きな主寝室にベランダがついてる。 「結構広いね、ここなら余裕でキングサイズのベッド置けるよ、千帆」 「そ、そんなに大きいのいらないよ」 「俺とくっついて寝たいから? えっちだなあ、千帆」 「そーゆー意味じゃないもん…っ。何なら、寝室別々でもいーしっ」 嫌な言い方をして、あたしはその部屋を出ようとする。でも。 「ちーほ」 けいちゃんはあたしの二の腕を掴むと、そのまま自分の胸元に引き寄せて、あたしを背中から抱きしめる。
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