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「――滝のような髪だな」
肩に回した手の指が、
私の腰まである髪に絡む。
「お、女らしゅうないのだから、
せめて髪くらい伸ばしておけと
母が言うゆえ……」
嘘だ。
本当は少しでも
可愛く見せたい、から。……
なんてことは死んでも告白できぬ。
「辰乃はそのままで良い。
女々しゅうないところが
気に入ったのだ」
「そ、そう……」
阿万祢とは、
女学生時代から続けている
居合いの試合場で出会った。
私は自分の剣技に
集中するのに忙しく
阿万祢の存在に
気が付いていなかったが、
わずかな風切り音とともに
繰り出された
阿万祢の静謐な一閃は
会場の視線を
一斉にさらう力があった。
もちろんそれは
私の視線も等しく奪った。
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