《第1話 辰乃編》第1章《辰乃視点》

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「――滝のような髪だな」 肩に回した手の指が、 私の腰まである髪に絡む。 「お、女らしゅうないのだから、 せめて髪くらい伸ばしておけと 母が言うゆえ……」 嘘だ。 本当は少しでも 可愛く見せたい、から。…… なんてことは死んでも告白できぬ。 「辰乃はそのままで良い。 女々しゅうないところが 気に入ったのだ」 「そ、そう……」 阿万祢とは、 女学生時代から続けている 居合いの試合場で出会った。 私は自分の剣技に 集中するのに忙しく 阿万祢の存在に 気が付いていなかったが、 わずかな風切り音とともに 繰り出された 阿万祢の静謐な一閃は 会場の視線を 一斉にさらう力があった。 もちろんそれは 私の視線も等しく奪った。
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