第2章  寂しさの色は《和助》

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こうして秋が近づいてくると 兄さと初めて会った日を 思い出す。 僕は行徳よりずっと寒い北国の、 貧しい農家に生まれた。 他に三人の兄弟がいたけれど 流行り病でみな死んでしまった。 凶作が重なった年に今度は 出稼ぎで体を壊した父が死に、 4年後には母まで逝ってしまった。 僕はまだ10歳だった。…… 親のいない農村の子供を 引き取ろうなんて人はいない。 みんな自分たちの生活で 手一杯なのだから。 村長はあまり良くない人で、 僕をよく分からない人買いに 売ってしまった。
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