第2章  寂しさの色は《和助》

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「飯まだだろ、食え」 ぽんと渡されたのは 冷えた握り飯とアジの干物。 「ありが……って、何なのこの握り飯」 「おお、金払えねぇ代わりにって 寄越すからよ」 「お客さんが?  それでこんな麦ばっかりの冷飯と 交換しちゃったわけ。兄さはぁ……」 僕みたいのを引き取るくらい 人の良いひとだから仕方ないけど、 それにしても……。 「ひっどいカタチ! これ握ったのどこの奥さんなの」 「しぁあねぇだろ。 5つくらいのガキがよぉ、 寝込んだ父ちゃんに 魚食わしてやりてえっつって 持ってくんだからよ……」 「えっ……。」 待って。   「ちょっと、そんなん聞いたら 食べられないでしょ! 何だよもう、何だよ」
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