第2章  寂しさの色は《和助》

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兄さが言うには、 それから少し頭が おかしくなってしまった 紗和さんは 嫁ぎ先から離縁されて、    ずっとひとりで 暮らしていたそうだ。 亡くした子と似た子を 見つけては可愛がって、 誘拐騒ぎを 起こしたこともあるとか。   「そういえば和助、 おめえ死んだガキに 目がよく似てやがる。 そうか、それで紗和のやつ おめえを……そうか」 そうか、そうかと呟いて 閉じた目をこする兄さ。 やっぱりなぁ。 そんなとこだろうと 感じてはいたんだ。 あの人は僕を通して その子をずっと抱いていた。   「……そっか」   あの笑顔も、料理も、涙も、 みんなみんな 僕に向けられたものでは なかったんだ。 「そっか」 大丈夫、大丈夫だ。 心のどこかで分かっていたから。 だから涙が頬を伝うのは、 寂しさのせいじゃない。 寂しさのせいなんかじゃない。
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